トレーニングする前に脱力を知る『物理から回旋動作を通して見えるものは?』2020、1月追記
これまでゴルフをしたいけどラウンドしたら身体が痛くなる、ハーフまでしか身体がもたない等ゴルフに関するお悩みをお持ちのクライアントさんとセッションさせて頂く事がありましたが全てのスポーツに関する大切なことなので記事にしています。
どのスポーツでも同じポイントは力が抜けていない状態から力を入れていると余計なエネルギーを必要とすることです。
当たり前ですがどの動きでも最小限の力の出力で動作を行うことができれば楽なはずです。力(エネルギー)を出力するには質量に速さが加わる事で力が出力されます。ゴルフというのは回旋運動でクラブを振りボールを飛ばしますからこの回旋運動が先ず注目されます。よく身体のバネを使って遠くへ飛ばそう!とか言いますが、このバネは下半身と上半身の捻りによって引き延ばされるバネエネルギーの事を指しています。効率的に力を使うには捻る前の状態でバネ自体に長さを持っていることが必要です。
なぜ長さが必要なのか?ここから物理学を利用して仮説を立ててみたいと思います。(興味のない方は『まとめ』まで読み飛ばしてください。)少し解りやすくする為に例をあげてみますE=mc2 これはアインシュタインが発案した有名な数式ですがEはエネルギー、mは質量、cは光速度を表しています。質量はエネルギーに変換されうるし、また逆にエネルギーは質量と等価であることを意味しています。これはあらゆるエネルギーに対応しています。また『エネルギーが増える=質量が増える』ことも指しています。ここから物理学者の山田克哉さんが考案した実験例を引用します。箱Aの底に強力なバネを固定してもう一方の先端は固定せず、伸びても縮んでもない状態のバネの質量はゼロであると仮定します。(図1)
この状態で箱Aと箱Bの総質量は1000gでした。次にこの強力なバネを伸ばしてもう一方の端を箱Bの固定点に固定します。バネを伸ばすときには外部からのエネルギーがバネに与えられます。伸びたバネが戻ろうとする力で箱は引き合い、やがてくっついてしまいます。それでもなお、バネは伸びた状態を保っているとします。この時バネには弾性ポテンシャルエネルギーと呼ばれる力が蓄えられます。エネルギーは無からは生じないため、この弾性ポテンシャルエネルギーは箱Bの固定点につなぐために、最初にバネを引っ張ったエネルギーに起因していることになります。伸ばされる前にはなんのエネルギーも蓄積されていないバネが伸ばされた後にはエネルギーが蓄積された状態になるのです。このバネが伸びた後の総質量を測定すると1030g!なんと30g増えているのです。質量が増えればエネルギーが増えるという先述の話から何らかの力を得て伸びることでエネルギーが増えることを実験が示しています。(さらに詳しく知りたい方は’先生の著書講談社『E=mc2のからくり』エネルギーと質量はなぜ等しいのか‘をご覧下さい。 )
『まとめ』
ここまでのことから①バネが伸びるため(エネルギーを溜める)にはバネを伸ばす力(元になるエネルギー)が必要②伸びたバネの中には元のエネルギーが残った状態になるとわかりました。これをロルフィングを受けた身体に置き換えたとすると統合された身体は全体的に伸びて広がってきます。ではこの伸びる力は身体のどこからやって来るのでしょうか?このバネを伸ばす力を得るにはバネ以外の組織においてどれだけ深く脱力出来ているかという事が大切になってきます。ここで一度意識して背すじを伸ばした、一般的にいう良い姿勢で回旋運動をしてみて下さい。どこか固まって動きにくい感じがあるかと思います。動きにくいというのはエネルギーを得るどころかロスしている証拠です。『背すじを伸ばす』という言葉の持つイメージだけでもう背骨周りの組織だけが優位に働いてしまうのです。我々は立位で『力を抜いて』と言われて意識的に抜いていても決して崩れ落ちることなく立つ事が可能です。では何がそれを保っているのでしょう?それは張力構造(テンセグリティ)です。この身体の張力にどれだけバランス良く深く休めるかがバネのエネルギーを残せるかと比例しているとも言えます。それが出来ればバネにある弾性ポテンシャルエネルギーを有効利用しながら動作ができるようになるということです。お気づきのように動作を行う前の状態での利用エネルギー量が変わるという事が大切なのです。より良い結果を得るためには何か特別なトレーニングやサプリメントを取り入れる事が必要だと考えがちですが、トレーニングの前に身体を整えてあげるという選択肢もありではないでしょうか。